アトリエ・アルケミストのお引っ越し

2026.05.31
日々のこと

「今日はここで制作する最後の日なの。アトリエは来月引っ越すからね」。
スタッフの声に不安そうな表情を見せたちびっこがいました。無理もありません。アトリエはちびっこにとって、制作を通して自分を知ったり、新しいことをできるようになったり、思い出がしみ込んだ「いつものあの場所」。その空間がなくなってしまう寂しさは、大人が感じるよりも大きなものであるはずです。

場所が変わっても皆がわくわくしながら制作に取り組めるように、新しいアトリエを整えるから待っていてね、そうつぶやきながら怒涛の引っ越し月間が始まりました。

荷造り作業風景

4月の終りから荷造りと同時に引っ越し先の建物の床張りを進めました。

新しいアトリエになる建物は建築士さん設計の可愛らしい古民家ですが、メインの制作部屋となる1階の部屋はカーペットが貼り付けてあるタイプ。これまでのアトリエのようにフローリングにしたい! ということでカーペットを剥がして檜材を張ることにしたのです。ものづくり集団ならではのチャレンジ精神で、床張り初心者メンバーで果敢にトライしました。

床張り作業風景
1日目は中高生クラスの男の子含む7人、2日目は3人で。柱の出っ張りなど壁の細かい凹凸まで計測して、フィットするよう床材を切っていきます。電動工具のありがたいこと! そして夏の湿気で木材が膨張しても大丈夫なように、板と板の間に適度なすき間をあけて張りつめていきます。膝と腰をだましだまし、ようやく完成しました。

地元に根差した活動をされている株式会社鳳山、You You Livingさんにアドバイスをいただき、実際の床張り作業の技術指導は玉川学園の2人の先生がしてくださいました。

今までのつながりのおかげで何とか無事に張り終えることができました。

床張りを完了したところ

3日目には木目に沿って塗料を塗っていきます。無垢材の感触がちびっこ達の脳に穏やかな刺激となっていく予感がします。また皆でお掃除頑張ろうね。この床を大事にしようね。ちびっこにそんな話をするのが楽しみな床に仕上がりました。

床張り完成

5月9日、青空のもと無事に大量の荷物を新しい建物へ移動しました。

力を合わせて次々と荷解きし、使い勝手を考えながらしまっていきます。今までとは収納スペースの大きさも形も異なるので、どうしたら取り出しやすくしまえるか、まるでパズルのようです。

荷解きし片付けていく

物がどうにも納まりきらず困ったスタッフが頼ったのは、学生時代に木工の授業で椅子などの制作技術を教わった恩師でした。

「この場所にこんな物をこんな感じで収納したくて」と図面無しにふんわりと相談しただけなのに「きっとこんな風にしたいのでしょう」と希望を汲んで、終わらないからと4時間もの間休憩も取らずに2カ所の棚を作ってくださいました。なんとありがたいことでしょうか。さっそく床に積み上がっていた物を収納していきます。

アトリエアルケミストの白い棚

棚の1つは、数日前にこども先生達が白く塗ってくれた2階のスペースに収まりました。

子ども先生とはアトリエに通っている中でも特に制作が好きで、年下のちびっこに教えるのが得意な小学生高学年以上のこども達。アトリエからお願いしてワークショップのお手伝いなどをお任せしています。

新しいアトリエで、こども先生達は服にも髪の毛にも白い塗料をくっつけながら、2階の押入れ内部の壁やドアを塗ってくれました。何も描いていないキャンパスのような白い壁はちょっと特別な感じがして、きっと制作に集中しやすい空間になるはずです。こども先生達はいまだかつて経験のない広い面積を塗るのにかなり体力を消耗した様子でしたが、頑張って仕上げて道具の片付けまでしっかりやり遂げてくれました。

別の日には、皆が制作に使う細々した材料を材料庫にしまってくれたこども先生もいます。「Atelier Alchemist」のロゴサインをレタリングしてくれたこども先生達は、白い塗料で塗られた板に何時間もかがみ込んで、細い筆に全力を込めて集中していました。

途中で調子をきくと「緊張するー!! まだ続くー!」と悲鳴をあげながらも「だんだん上達して来た」と嬉しそう。どんなときでも真剣に制作に取り組む姿は輝いて見えました。

ロゴサインを描くこども先生

引っ越し期間中、何人もの生徒さんが応援に駆けつけてくださったのはとてもありがたいことでした。3丁目のアトリエで、時間のかかる細かい梱包作業を丁寧に進めてくださった親子の皆さま。壁に留めてあったパネルを外そうとしたらアトリエの工具が壊れて動かない! というピンチの事態に、電動ドライバーを持ってきてネジを外してくださったお父さま。

荷物を運ぶ風景

 1丁目の新しいアトリエで、箱だらけでどこに何があるのかてんやわんやの中、制作に使う材料を次々と棚の中にしまってくださったちびっことお母さま。「これは2階の材料庫がいいね」とかさばる荷物を1階から2階へ運ぶのも、何度も手伝ってくださいました。棚やパネルを工具で備え付けたり、重い物を運んだり、頼もしいお兄さん。細かい作業から力仕事まで、皆さんに手伝っていただきました。

看板をつける作業風景

アトリエが好き、制作が好きという一人ひとりの気持ちがつながって、すごい熱量で「一緒に場をつくる」ということができたのだと思います。感謝と共に、「人のチカラってすごい」と改めて感じました。

荷物を整理している風景

アトリエ・アルケミストは26年目にして今回が2回目の引っ越しになります。設立から19年間活動したのは玉川学園8丁目でした。2019年9月に同じ町の3丁目へ移転して7年間、コロナ禍が来ようと何があろうと変わらず制作の場であり続けました。

郵便受けを設置している風景

前回に引き続き今回も、たくさんの、本当にたくさんの方々の力が合わさって成し遂げられた引っ越しとなりました。ご縁のあった地域のつながり。温かく見守ってくださった近隣の皆さま。手伝ってくださったり、気持ちを寄せてくださったりした生徒の皆さま。スタッフを支えてくださる友人、家族。皆さまのお陰で、また新しい場所で開講できることに心から感謝しています。

「20年後もこの場所でちびっこ達を迎えられるようにしたいね」。決意新たにアトリエ・アルケミストの第3章が始まります。今まで通りわくわくしながら、これまで以上にその人の力を育むことができるように、1日1日に心を込めて生徒の皆さんに向き合って参ります。これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。新しいアトリエの外観