ちびっこクラス

2020.11.27
コロナを超えて

「これはまずいかも」

コロナ感染数が日々増えていくことがニュースで出ていたとき、
「もしかすると、これは早晩学校や会社がストップすることになるのでは?」
とスタッフ同士はささやきあっていました。

もし、学校や塾がストップしてしまったら。

ちびっこはずうっとおうちにいることになります。
共働きのおうちのちびっこは長期間、日中を彼らだけで過ごさなくてはいけません。

だとすると。。。

アルケミストは絶対に、休んではいけない。
むしろいつもより、おもしろい時間をつくろう。

オンラインに切り替えるにあたって、ちびっこクラスと中高生クラスはカリキュラムを約半年分、オンライン仕様につくり直しました。

材料も合わせて発注、おうちの方と連絡を取り合って約半年分の画材や材料を持ち帰って頂きました。すべてのおうちに材料が行き渡ったのは緊急事態宣言が発令されてから3日後のことでした。ギリギリ、滑り込みセーフ。。というところでした。

やったこともないオンライン開講を、参加しますよ、と言ってくださった、おうちの方々のご理解に支えられてのことでした。

めちゃくちゃだけど熱かった初回講座

そうして迎えたオンライン開講の初日。

主宰の羽田はカリキュラム作成は自信があってもネットワーク関係はまったくだめ。携帯電話はアトリエのイーゼルにマスキングテープでぐるぐる巻きにして固定して画面の高さを調整。その高さに合わせてざぶとんを重ねて床に正座して、開講となりました。

それでもちびっこは元気でした。

小さな画面の向こうとこちらでいつもどおりのクロッキーをして制作をして、片付けもいつもどおりやって。

「ここどうやるの?」「ここわかりません!」

マイクの音量が各家庭で違っていて、すごくいろいろな声が聞こえるおうちもあったりして、大声でしゃべったり質問しながらの初回となりました。

作品を通じた交流

ラインの「アルバム」機能をつかって一人ひとり、作品のアルバムを作っていただきました。お家の方とちびっこが一緒に、ほかのおうちの子の作品を見あえることはリアル開講ではなかったことです。ご家族で様々なおうちの活動や作品を見あえること、トークで色々な反応が得られることは楽しい刺激になった様子でした。

他教科へのつながり(領域横断的な学習)

学校のリアル学習がストップしてしまったので、他教科に繋がる内容を盛り込みました。あんまりたくさんできなかったですが。。

ちびっこのカリキュラム

長いお家時間を過ごすことを配慮して、アトリエの時間以外でも継続して行えるような長期テーマと、その週ごとに完結するテーマで進めました。

どの程度緊急事態宣言が続くかわかりませんでしたので、2ヶ月分(8週分)を作成・準備しました。結果としてはぴったり。8週オンラインを行い、9週目からリアルに復活しました。

お家時間を豊かに楽しく過ごして欲しい

アルケミストには平面造形・立体造形、などの制作ジャンルのほかに「フォーカスポイント」という独自の分類があります。

一つの制作には色々な要素がありますが、お料理のメインを決めるように、「今日は、これにフォーカス!」とスタッフがそれを意識して対応することで内容がちびっこに「届く」ようにするものです。

制作を様々な脳・体・こころの活動と捉えて、『この制作行動はちびっこのどこをよく使うものなのか?』で制作を分類したものです。

今回は、お家でこもっていることが多いことを考え、ぱあっと発散して心を楽にする、心をよく使うもの、つくる過程で誰かとコミュニケーションをはかるもの、などを多めに入れて設計しました。

◉◉ 実際のメニュー ◉◉

水彩絵の具を作ってみよう

「そもそも絵の具って何でできているの?」絵の具の組成を知って、実際に作ってみよう、というテーマです。絵の具は赤・青・黄色の3色好きな色を作りました。3原色と白・黒でほぼ全ての色が作れる、という「色の3原色」のおさらいです。

「ゆめの部屋」

長期の制作テーマとして設定しました。
ダンボールや空き箱を利用して、自分が思い描くゆめの部屋を作るというものです。手法や基本立体の加工方法は説明して、あとは自由にやってね、というものです。「ゆめ」の部屋なのでなんでもあり。水族館が付いている部屋、庭が部屋、など色々なアイデアの作品ができました。

家族をデコろう

6年生算数で習う、線対称のかたちを体感しつつその原理を感覚的に理解してもらおうというものです。そこに笑い・イベント的な要素を加えました。
紙で色々なアイテムを作り、おうちの方を仮装させてしまおうというものです。

悪魔にさせられたお父さん、姉妹で猫ちゃんになった子など、実に様々でした。家族がみんな照れ屋さんの子は、ぬいぐるみに仮装をしました。

うごくいきもの

紙コップと割りピンを使って、うごくいきものをつくりました。
「一点を軸に回る仕組み」を覚えてそれを利用した作品をつくるというものです。
仕組みの理解してもらうため、メインの仕組みはひとつだけ。それにサブ仕組みも伝えて、少ない要素を組み合わせてどんなものができるか?アイデアを巡らせてもらいました。人によっては、割りピン自体も自分で紙製で作れるようになりました。

てづくり万華鏡

なんでも好きにやっていいよ、と言われるとけっこう困るひともいます。
この課題は完成の形が決まっており、手順を聞いたり覚えたりするレッスンでした。手順に沿っていくときちんと作品ができるという、工程の大切さを実感してもらう回です。模様のもととなる、中にいれる素材と外側のデザインは自由にして、同じ万華鏡だけれど、みんな全然違うものができあがりました。

妖精の目になって

デッサンの前段階として「よくみて描く」をやりました。
自分が10センチくらいの妖精になった、と仮定してもらって部屋中を探検してもらって超アップで選んだ場所を鉛筆で描く、というものです。

「よくみて描いてね」は伝わらないことが多いです。『妖精ならいろいろなものが大きく見える、だから細かいところまで描くんだ』というストーリーでじっくりみることをやってもらいました。最後に、「これはどこを描いたものかな?」とクイズのように作品を鑑賞しあい、大盛り上がりとなりました。

英字新聞のゴール

発散と遊びにフォーカスした課題で、二次的にはデザインの初歩を体験することを目標にした制作です。

GOAL、の文字をひとつひとつ、ノート程度の大きさの色画用紙を使ってそれぞれデザインしてもらい、横断幕のように帯状にカットした新聞紙に貼り付けます。それをゴールテープのように走ってきて切る動画を撮るまでが今回の課題でした。おうちの方のご協力があってこそ成立する課題です。

苦労して作った作品を家の近所で全力疾走して惜しげも無くバリッ!と破く人、なかなか破けなくてテイク3まで頑張った子など様々でした。照れ屋さんの子は室内でゴールを切っていました。

エリックカールになろう×感覚のエクササイズ

コラージュ技法(貼り絵)はエリック・カールの絵本「はらぺこあおむし」で目にしたことがある方が多いと思います。

「くすぐる」「つねる」「叩く」「なぜる」など、触覚を色と形で表した紙を何枚かつくり、その紙を切ったり、ちぎったりして貼り絵をつくってもらいました。ステイホーム期間、人とのふれあいが制限された状態から、学校の再開に備えて身体を目覚めさせよう、というのがねらいです。

音を聴いて色と形にするなどの感覚で遊ぶ制作は、アルケミストでは定番中の定番の制作です。今回は五感の中でも触覚をいろと形にしてもらいました。

「黄色い声援」などの言葉からわかるように、ある感覚を他の感覚に置き換えてイメージするちからは、誰でも普通に持っています。

一つの感覚に注目して、他の感覚へ置き換えてみることは、ピンポイントでぐーっと筋を伸ばすような、感覚のストレッチ、エクササイズになり、非言語の情報「よく感じて」「総合判断する」必要があるコミュニケーション能力の向上に役立つ、とアルケミストでは考えています。

理屈はともかく、もりあがりました*

子ども先生:英字新聞のトートバッグ

緊急事態宣言が一区切りつき、少しずつみんなが学校に行き始めたころに行なった課題です。先生役をお願いしたちびっこに、アルケミストまで来てもらい、制作の先生をやってもらいました。スタッフが開講している状態と全く同じように、時間始めのクロッキーを行なってもらい、制作の説明をしながら皆の様子をみて、できない子がいないように進め、質問に答え、最後の片付けまでもっていく。。というものです。

やるほうも、聴く方も、とにかく必死!!

本当にがんばりました。
終わったとたん「プシュ〜〜・・」と音がしそうな様子でした。