ありがとう、鈴木先生! 〜ちびっ子クラス鈴木先生のアトリエ卒業〜
- 2025.04.05
- 日々のこと

ありがとう、鈴木先生!
〜鈴木先生のアトリエ卒業〜
4月。出会いと別れの時期ですね。
アルケミストも3月でお友達が卒業したり、4月から新しいお友達がやってきたり。。
新しい風が吹き込む季節になっています。
今回は、3月末でアルケミストを卒業されたスタッフの鈴木先生のことを書かせていただきます。
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鈴木先生は、アルケミストの貴重な男性スタッフです。
制作技術が高く、他の先生からも一目置かれている存在です。

鈴木先生は、
羽田が美術の授業を受け持たせていただいていた
玉川学園の中学年の生徒さんでした。
鈴木先生にとっては、
中学校に入学して一番はじめに出会った美術の先生、が羽田でした。
もう、10年経っているんですね・・・

制作に対する意識と集中力が高く、
本当に真面目な生徒さんだったことが
深く印象に残っています。
物静かなのですが、ここぞ、という時に
すごいクリエイティビティと集中力を発揮して、
学生向けコンクールでさまざまな賞をいただくような、
そんな学生さんでもありました。

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玉川大学の構内で、大学生になった鈴木先生と
羽田が偶然再会したのがきっかけで、
鈴木先生は
アルケミストにいらしてくださることになりました。

とても丁寧に、着実に進めるお仕事ぶりと、
なんとも品格と含蓄のあるコラムを書く方で、
担当曜日は学生の本分である授業日よって
変わっていきましたが、
一貫して誠実で丁寧なお仕事をしてくださるスタッフさんでした。

【幼児教育者をめざして】
鈴木先生のご実家は、都内にある立派な幼稚園です。
鈴木先生、なんと小学校の時から
ご実家を継ぐことを決めていたそうです。
小学校の卒業式で「幼児教育の道に進みます」と宣言したそう。

中学校から大学まで玉川学園で学んだのも
「教育といえば玉川だと思ったから」とのこと。
とにかくまっすぐなんです。
そんな鈴木先生は、大学の
卒業制作展では自然環境が減っている都市部で、
自然体験活動が存分にできる
幼稚園の園庭デザインを研究し、提案しました。

実際の幼稚園さんを取材し、鈴木先生の理想の幼稚園、を
・論文
・横幅1メートル程度のパネル
・完成予想図(水彩画)
・建築模型
にまとめたものです。書くだけでボリューミーですね。


この研究は大学の『学部長奨励賞』をいただきました。
うーん、
やっぱり、ここぞという時に力を発揮する鈴木先生です^^
【美術家・制作者として】
鈴木先生のもうひとつの軸は、制作。
制作歴があんまり素晴らしいのでまとめました。
きっと、これからもいろいろな制作を続けながらお仕事をされていくのだろうな、と思います。
高校1年生:
タイトル「金翅鳥」(こんじちょう)
高校生国際美術展で佳作をいただいたそうです。

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高校2年生:
鍛金の材料と技法で抽象彫刻を出品。
タイトル「彩雲」(さいうん)

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年号が「令和」に変わった日、当時高校生だった鈴木先生は、
学校の屋外スペースで鍛金作品「彩雲」を制作していました。
制作中に「令和」の配信ニュースを見ながら
作業をしていたことが記憶に残っているそうです。
学校が春休みのときは
造形作家の杉本俊夫さんの工房の一角で鍛金制作を続けておられたとのこと。
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高校3年生:
タイトル「綻び」(ほころび)
高校生国際美術展で奨励賞。
一見すると枯れた花のようにも見える、
開花する直前のひまわりの蕾の絵です。

高校生活最後のコンクールとして彫刻を作ろうとしていた
当時高校3年生の鈴木先生は、
コロナ全国一斉休校の時期と重なってしまい、
学校での制作ができなくなってしまいました。
そこで、家でも描けるということで、
油絵に挑戦することにしたそうです。
大きめのサイズの本格的な油絵に挑戦するのは
これが初めてだったそう。
コンクール募集の最大サイズが
F50号のキャンバス(約117㎝×91㎝)だったので、
鈴木先生は、コロナ禍のなか
画材屋さんに行って
F50号用の画布と木枠を買って自分で張って制作したそうです。
空いている貸家のお風呂場をアトリエとして使い、制作を続けたそうです。
人生初のアトリエは空き貸家の風呂場だったんですね。
コロナの真っ只中ということもあり、
コロナで世の中が疲れていて、破綻しつつある・・と感じたそうです。
同時に、高校生の鈴木先生が持つ、
未来への希望や期待感もあったそう。

世の中が、ほころぶ。
希望が、ほころぶ・・・
花が開く、直前の様子に重ねて
一見すると枯れた花のようにも見える、
開花する直前のひまわりの蕾の絵を描き、
二つの意味をもつ、この言葉をタイトルにしたそうです。
作品は画像で見ると暗いのですが、すごく迫力のある作品です。
受賞時は国立新美術館に展示されました。

その後は2025年の今でも、玉川学園の美術科校舎に飾られています。

ほか、高校時代に玉川学園高等部の展覧会で最高賞(最優秀賞)をいただき、
大学では、前述のように卒業制作で『学部長奨励賞』をいただきました。
賞がたくさんですね。
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賞がえらい、と言いたいのではないのです。
まっすぐとりくむ、揺るがない姿勢は、
誰でも、どんな分野でもひとの心をうごかすとおもいます。
鈴木先生の「まっすぐ」が
作品の強度につながって、
みるひとの心を動かしたのでは、と言いたいのです。
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面白いのは、鈴木先生はご自身の賞歴を誰かに声高に話す、
ということが殆どないこと。
コラムを読んで初めて知る同僚のスタッフさんも
きっと多いのではと思います。
制作に関係する話題になると自然と熱が入って、いつもわりあいに寡黙な先生が
たくさん話し出す、ということは知っていても、
こんなにいろいろな賞歴を持っていたことは
アルケミストのスタッフ仲間さんも、お家の方々もご存知ないのではと思います。
「ずっと続けているんです」という制作の習作やメモも、それはもう膨大な数で、
一度、拝見したことがあったのですが、
それだけを展示しても作品になるボリュームがありました。
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都内の幼稚園がご実家のため、
4月からはご実家に就職し、
園長先生修行がはじまっています。
並行して、幼児教育のお勉強を
玉川大学の通信教育課程を
受けながら行うとのこと。
どこまでいっても本当に、
まっすぐな鈴木先生なのです。

自分にとって何が大事で、
何をするんだ、ときめることができているって、
ほんとにすごいと思います。
美術家と幼児教育家、
ふたつの顔を持つ園長さんがいる幼稚園。
こんな先生がいる園の子は、ラッキーですね。
羽田の研究等の関係でご縁はまだまだ続きますが・・
鈴木先生、本当に、ありがとうございました。
これからも、どうぞ、よろしくお願い申し上げます・・・!

(文責:アトリエ・アルケミスト主宰 羽田由樹子)