ちびっこクラスの制作・カリキュラム

その人の興味や挑戦してみたいことからスタートする点は、
子どものアトリエでも変わりはありません。
加えて、小学生の皆さんには、制作を通してなるべくたくさんの
経験の引出しをつくってもらいたい、とアルケミストでは考えています。

制作を通してじぶんを知る/ほかの人と出会う

たとえば一色の色をえらぶことは、自分の内側とのやりとりです。

道具を使うということは、身体とモノとのやりとりです。

絵を描きたくて見上げた空がきれいだな、というのは自分とまわりの環境とのやりとりですし、

作ったものを誰かに見せることは、他のひととのやりとりです。

そんなやりとりをくりかえすことは、自分の表現の傾向やじぶんのペースをわかっていくことにつながります。

それは、気持ちや心だけではない、そのひとの身体のクセも含んだ、まるごとの素の自分を知る作業につながるはず、とアルケミストでは考えています。

身体技法としての制作

制作を通じて身につけられることは、テストの点数のように目で見ることはできません。

でもそれは、身体がおぼえてくれるスキルとして確実に身につくものであり、本質的にはコミュニケーションのスキルであるとアトリエでは考えています。

そのために、アルケミストでは、
「なにとのやりとりにフォーカスして制作するのか」で制作をゆるやかに分けています。

実際にはコミュニケーションの要素は複雑に絡み合って進んでおり、「ここからが、この制作」といった分け方はできませんが、

「今はこれにフォーカスした制作なんだ」とスタッフが意識することで、それぞれの皆さんの制作の特質を見つけたり、

「こうじゃないのかな?」と問いかけたり、芯の通ったレクチャーができる可能性が高くなる、と考えています。

そのようにして、それぞれのお子さんが、楽しみながら通っていたらいつの間にか色が自在に作れたり、ノコギリが自在に引けたり、人を気遣えるようになったりすると良いなと思っています。

そばにいるひと

アトリエのスタッフの仕事は、「教える」というよりも「側にいる」と表現した方がぴったりきます。もちろん技術もお教えしますが、基本的には制作する本人が主体です。

側にいるスタッフは、その日のちびっこを見て「今、どのようなことを欲していて、どのような状態で、どのようなアプローチが可能なのか」を総合判断して制作の相談を進めます。

たとえば、同じ「ひまわりを描く」子の側にいるとしても、
発散するために細かい部分は気にせずどんどん描きたい子と、
よく見て忠実に再現することを目指したい子、
ひまわりを通して何かの想いを表現したい子では対応が違ってくるはずです。「ひまわりをかく」の根っこにある部分を読み取ること、
会話でも方向を聞き取ること、
そこから対話しながら相談して、彼らが制作の方向を決める手伝いをすることがスタッフの仕事と言えます。

ちびっこの個々の性質や好み、身体のくせ、
その日の体調などによっても 制作の方向性は変わるはずです。
同じように、スタッフも個々に違った性質を持つ人間ですから、
いつも的を射た対応ができるわけではありません。提案がマッチしないこともよくあります。
でも、「自分のために何かをしようとしてくれるひと」が
側にいる人がいるか、いないかは、ちびっこの制作には大きな要素となるのでは、とアトリエでは考えています。

具体的には、以下のようなイメージです。
例1: (〇〇ちゃんはクラス替えが終わったばかりで落ち着かないから、どんどん 発散して行く方がいいだろう。たくさん色を使うのが好きだし、クレヨンが好 き だから、まずはクレヨンを提案してみよう。紙は大きい紙だとかえって構えて しまう人だから、やや小ぶりな紙をたくさん使ってもらおう。工作も好きな子だから、ダンボール箱に好きな花をたくさん描いてお家にすることも同時に提案してみようかな)
=こころ、気持ちにフォーカスして、発散をメインにする

例2: (〇〇くんは最近、技術に興味があるから、じっくり取り組む油絵を すすめてみよう。難しそうであればアクリルで重ね塗りの技法を紹介してみよう 。)=技術の向上にフォーカスして、練習/習熟をメインにする 等です。

場所という力

そこにいけばいつもの顔がいて、色々な分野や素材と出会える。自分の世界を表現出来る。

元気な日も、そうでない日も、「○曜日にはアトリエがあるから」と楽しみにしてきてくれるような場所であるといいなと思っています。

また、そこに「制作から感じることができる自分」の場所がある、と思ってもらえるといいと思っています。

待つこと

花のつぼみを指でこじあけて咲かせることができないように、色々な体験を自分のものにしていくためには時間が必要です。

どんなにたくさんの体験をしても、たくさんの知識を覚えても、「それがどうして必要なのか」を感じながら繰り返して使い、じぶんのものにしていく時間、あるいは意識の下で体験が編み直されることを待つ時間がなくては、それらはばらばらの「以前やったこと」になってしまいます。

色々な体験が経験になるための、身体にしみ込んでゆくことを待つ時間と場所、
そのひとの体験が「じぶんの経験」として統合していくためのまちがえてもよい場所、自分をまつ場所としてアトリエがあるとよいと思います。

体験が自分の中で編み直されて経験となると、思わぬ組み合わせの制作アイデ
アが生まれたり、目的のために現状を判断したり、知識と経験を総動員して計
画を立てたりすることができるようになる。

そうなると、制作はもっと、楽しいものになるのではないだろうか・・・とわたしたちは考えています。

そのためにも、アトリエアルケミストでは「待つこと」を大切にしたいと考えています。

技術について

そのひとが心と身体の底からつくったものは、そのこと自体が尊いのだ、とい
うベースがまずあって、そこから自分はどのような表現の傾向を好むのかを
たくさんの制作を重ねることで練り上げていくことを優先しています。

「やりたいこと」「やってみたいこと」「つくりたいもの」があって、はじめて技術の精度が問われ、画法や素材の検討がおこなわれていく、といった順序でものをみていくのがアルケミストの「子どものアトリエ」のアプローチです。

表現したいものを伝えやすくする方法として、技術や画材、道具に関する知識がある、という考え方です。

それは、道具や画材に対する扱いや知識、技術をないがしろにすることではありません。

技術は感覚をまとめあげ、自在に働かせるための具体的なレッスンにもなります。

技術を習熟していく過程で整い、培われる感覚を大事にしながら、

表したいものを伝えるための方策のひとつとして手法との出会い、技術の習熟があるという順序で制作を重ねていってもらいます。